経営管理ビザ審査基準の改定と資本金増資の実務

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経営管理ビザ審査基準の改定と資本金増資の実務

十月に入り、中介業者・行政書士・投資家・経営者の誰もが注目しているのは、経営管理ビザ審査基準の改定がいつ正式に実施されるのか、という点です。
本稿では、沃野国際行政書士事務所が実務の観点から「資本金増資」に関する基本的なポイントを解説いたします。


見せ金(みせがね)の違法性について

まず理解すべきは、日本の資本金増資は単なる形式的なものではない、という点です。
見せ金(みせがね) とは、会社設立や増資の際に、実際には出資が行われていないにもかかわらず、あたかも資本金が払い込まれたかのように虚偽表示する行為を指します。

この行為は独立した罪名として規定されているわけではありませんが、

  • 会社法

  • 刑法

  • 商法特則

などにおいて、虚偽申請・虚偽記載・詐欺 として処罰対象となります。


資本金は会社のものである

資本金は会社に帰属し、株主が一度出資した後は自由に引き揚げることはできません。
事業経営は遊びや恋愛ではなく、社会的影響を伴う行為です。したがって、出資においても「一度決めたら最後まで責任を持つ」という姿勢が求められます。


増資の基本的な仕組み

増資とは、株主が会社に対して追加で投資を行うことを意味します。
原則として、新株の発行を伴い、株主が株式を引き受け、その対価として資金を会社口座に払い込むことで実現します。株主は既存株主でも新規株主でも構いません。

日本において一般的な増資の方法は以下の二つです:

  1. 現金出資による新株発行
    株主が新株を引き受け、資金を会社に払い込む。

  2. 債権出資(デット・エクイティ・スワップ)
    株主が会社に対して有する債権を出資として振り替える。


現金出資による増資のポイント

現金出資は最もシンプルな方法です。

  • 既存株主のみの場合:
    財務諸表を基に直近の会社株価を算定し、
    (目標資本金額 − 現在の資本金額) ÷ 株価 = 発行株式数
    の計算式で新株数を決定することが可能です。

    あるいは設立時の株価を基準として必要株数を発行することもできます。

  • 新規株主が参加する場合:
    株価設定が柔軟に可能ですが、著しく有利な価格で新株を発行する際には、株主総会の特別決議が必要です。

コスト面
司法書士による登記費用や、増資額に応じた登録免許税が発生します。
また、法人名義の銀行口座が未開設であれば増資は不可能であり、会社設立時とは異なります。

資金源に関する留意点
この資金は株主による新たな投資であり、資金源の説明を準備する必要があります。
多くの経営管理ビザ保持者は年収300~400万円程度であるため、数年間で2,500万円を貯めるのは困難です。
理論的には、増資資金は海外口座や親族からの借入金など、国外からの送金である場合が多いと考えられます。


債権出資(デット・エクイティ・スワップ)

現金を再度払い込む代わりに、株主が会社に貸し付けた資金(借入金)を株式に転換する方法です。

  • メリット
    銀行や政策金融公庫以外の借入金、特に代表取締役である株主からの貸付金を資本金に振り替えることで、資本金を増加させることが可能です。
    手元資金が不要であり、会計上も負債が減り資本が増えるため、自己資本比率が改善します。

  • デメリット
    実際に会社のキャッシュは増えません。
    資金繰り改善や新規事業への投資には繋がらず、単に債務を株式に変えるにとどまります。
    更新審査時には「資金流動性が乏しい」と判断されるリスクもあります。

実務上は、当初の貸付金が確かに会社口座に入金されたことを証明する必要があります。


利益剰余金を用いた増資の落とし穴

経営者の中には「利益留保が多いから、それを使えば簡単に資本金を増やせる」と考える方もいます。
しかし、利益剰余金をそのまま資本金に組み入れることはできません。

実際に行う場合の流れは:

  1. 利益剰余金を株主に配当(源泉税20.315%課税)

  2. 株主が新株を引き受けるために払い込み

  3. 増資の登記

となり、結果的に課税コストが余分に発生し、しかも多くの場合、利益剰余金は現金で残っていないため、実際に株主がキャッシュを補填する必要があります。

このため、留保利益を使った増資は実務上あまり選択されません。


投資家への注意点

最後に注意すべきは、日本の会社に投資する場合は日本の法律が適用されるという点です。
契約内容に違法または公序良俗違反が含まれる場合、その部分は無効となります。
実務上、中国法と日本法では大きな相違があり(例:対賭契約の有効性)、安易に「中国の契約ルールで押し通せる」と考えるのは危険です。

M&Aや出資を行う際には、必ず日本法に精通した専門家に依頼することを強くお勧めします。
例えば、沃野国際行政書士事務所では、外国人投資家や経営者の皆様に対し、制度に則った適法かつ効果的な資本金増資・投資スキームをご提案しております。


まとめ

  • 経営管理ビザ審査基準の改定により、資本金の確認がより重視される。

  • 増資の手法には「現金出資」「債権出資」「利益剰余金の活用」があるが、それぞれ利点・欠点が存在する。

  • 見せ金は違法であり、実際に株主が責任を負って出資する必要がある。

  • 資金源の説明責任が厳しく問われるため、事前準備が不可欠である。

  • 中国人投資家は日本法の特性を理解し、専門家の助言を得て行動することが望ましい。


✦ 本記事の内容に関するご相談やご依頼は、沃野国際行政書士事務所までお気軽にお問い合わせください。

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